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診療室日記580

チェーンスモーカーの患者の抜歯にかかろうとしたら、やたら怖がって緊張している。

「前にさ、めちゃくちゃ時間かかって、痛くって、腫れてさ、大変やったことがあったんさな」
「それでかあ。めちゃくちゃ緊張感ただよってるで(笑)」
「すぐ抜ける?痛くない?」
「すぐかどうかはやってみなきゃわからんよ。たぶん、そんなに手間取らんと思うけどな。痛みは、麻酔が効いてたら痛くないさ」

残根状態の歯なので、丁寧にへーベル(根っこを骨から脱臼させる道具)をかけていった。鉗子(ペンチみたいな挟む道具)で挟める場所がないからねえ(^▽^;)。

「痛い?あ~、返事できんか」いったん休憩した。
「痛くはないけど、押されてるのはわかる。それが怖い」
「うん。感触はなんとなく感じるし、音はするしなあ」
「ぐいぐい押してるのが、手が滑ったら顎に刺さるんやろなあと思ったら、怖い」
「そんなことするかいな。医療事故になるやん(笑)。今までそんなことしたことないって。安心しな」

やたら緊張しているので、なるべく喋りながら作業を進める。

「私はさ、抜いた後の治りや痛みを考えながら抜くんさ。なるべくきれいに治って、腫れもなく、痛みもないほうがいいやん?そう考えて作業してるよ」
「根っこしかないから、挟むとこがないんさ。丁寧に動かしていくわけやね~」
「もう動き始めてるからね~。もう少しかな?」

ほとんど実況中継だ。本人が平気ならば、もう少し具体的に治療状況(術野)を説明したりもする(笑)。

予想よりは動きにくい。???癒着?根肥大?ま、ゆっくりいこう!

抜いてみたら、根っこの先がコロンと丸く膨れてた。このタイプはひっかかって抜きづらいのよねえ。


作業のすべてを終わったら、患者がひとこと。
「先生、サドやろ?」


自信を持って宣言しますが、私はサドではございません(*^。^*)。



根っこの丸まった、抜いた歯を見せて説明した。
「こういう形の根っこは、ひっかかって手間取ることが多いのよねえ。ま。この程度で抜けて、よかったよかった」
「あ~、昔、抜くのに時間がかかった根っこも、先生がそんなこと言ってて、こんな形してたわ」

なるほどね。


抜歯している間、近くで作業をしていたIT担当のH氏は、「あ~、気持ちがよくわかったわ~。”僕も。僕も”って心の中で呟いとったわ」とのちほどのたもうていた。彼も歯医者恐怖症なのである(笑)。ずいぶん慣れてはきたけれど(^▽^;)。

本当に歯医者を怖がるのは、女性より男性に多い気がする・・・(笑)。



by tamaki50 | 2020-02-27 13:56 | 診療室日記 | Comments(0)
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