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診療室日記570

お盆の13日、ウチは診療していた。今年はいつもどおり13日から15日まで休むと、11日日曜からの5連休になってしまうので、真ん中の13日は開けたのだ。
ただし、ほとんど予約は入れず(入らず?笑)、急患対応体制~(笑)。スタッフも「都合のよい人だけでいいよ~」と言ってたので、二人だけ。ひとりは子連れ(笑)。

午後も一通り終わり、「早じまいしようかあ」と片付けを始めたら、なにやらスタッフが窓際へ集まってる。

「どしたん?」
「何か捕ってるみたいで~」
「何がおるんかなあ?見てくるわ」と私。

診察室の目の前には、海に繋がる大きな側溝があって、時々大きな魚などが紛れ込むのだ。

昔は生活排水の流れる側溝だったけど、今は下水設備も整い、洗剤の泡が浮いていることもない。
比較的きれいな側溝だ。


「何がいるんですか?」
「ワタリガニです」町からの人っぽい。
「あ~、ドテヤブリやね」かなり大きなカニが二匹。
「何?」
「この辺ではドテヤブリって言うの」
「珍しいですか?」
「ここまで入り込むのは珍しいね」
「タモでもあれば~」高枝切りハサミで挟もうとしている。若い夫婦っぽい。
「なんか道具ないかなあ?見てくるわ」

あいにくタモはなく、芝生用の伸縮さらい(枯れ葉とかを集める三角形みたいな形の)くらいだ。
持って行ったら、すでに一匹上げていた。
「お!上手い!」
「片手のハサミが取れたんですけど~」
「あ~その爪(私はそう言う)危ないからね。指くらい切られるよ」
「じゃ、もう片方も切っといたら?」と若奥様。
「そやな。そのほうが安全だわ」

で、爪のなくなったカニを嬉しげに持つ奥様。
「わあ~い♪夏の思い出~o(^-^)o」
「おまえ凄いな。素手で触れるんや」
「もう一匹は?同じ要領で捕れば?」
「はい!」と気合いの入る旦那様(笑)。

二匹とも引き上げ、爪を切った。奥様は大きな一匹を両手で持っている。
「あなた、そっちのカニ持って」
しかし、彼は苦手らしい。どうにも掴めない。「ハサミないから怖くないでしょ?」と奥様。
「蜘蛛とか苦手なんですよ。裏返ってると蜘蛛みたいで~」
「大丈夫だって。これはカニ(笑)」と私。
「表向きになればカニかな?」ひっくり返す旦那様。すかさず逃げようとするカニ。
「表にしちゃダメよ。逃げるわ!ハサミも持ってきて」と奥様。
どうしても触れない旦那様(笑)。

「わかった。私が入れ物へ爪回収して、このカニ持ってくわ。ウチどこ?」
「すぐ近く。そこの青い家です」
チビがいつも捕り物に使っている小さなバケツに爪を回収し、片手にカニ片手にバケツを持って奥様と歩いた。
旦那様は「先に行って、バケツの準備しときます」と言って走っていった。

すぐ近くの家だ。普段は”定年後いなか暮らし”らしきご夫婦が住んでいる。家族が集まったのかな?
小学低学年くらいまでの4-5人が玄関先まで見にきてた。お孫さんなんだろうなあ。

「シーカヤックの人が、『2-3日きれいな海水に生かしといてから調理したらいい』と言ってたから、海水汲んできて放しといたらいいですよね?」
「ホンマはそうやけど、両手切ってあるから、死んで腐っちゃうわよ(笑)。丁寧に洗って、充分煮たら大丈夫。海水くらいの塩水でね。殻が固いから、金づちで割らなきゃ食べれないわよ」
と調理法も教えておいた。

「ありがとう。おばさん♪」


ん~、おばさんかあ。ま、そうやな。自分の子とたいして変わらないお年頃やもんな~。
若干の複雑な感情を残しつつ、「どういたしまして~(^o^)/」と笑って去った。

夏の捕物帖でした~。



by tamaki50 | 2019-08-16 12:17 | 診療室日記 | Comments(0)
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